知っておきたい手首の痛みの正体と対処法
手首の親指側に痛みを感じたことはありませんか?特に手首を動かしたときにキュッという音がしたり、腫れぼったい感じがする場合、それは「インターセクションシンドローム」かもしれません。
この症状は日常生活でよく見られるものですが、適切な知識と対処法を知ることで改善できる疾患です。今回は、インターセクションシンドロームについて詳しく解説していきます。
インターセクションシンドロームとは?
インターセクションシンドローム(Intersection Syndrome)は、前腕にある筋肉の腱が交差する部分で起こる炎症性疾患です。
日本語では「交差症候群」とも呼ばれます。
発症メカニズム
前腕には多くの筋肉があり、それらの腱は手首付近で複雑に配置されています。インターセクションシンドロームは、以下の腱グループが交差する部分で発症します:
第1区画の腱
- 長母指外転筋腱(APL:Abductor Pollicis Longus)
- 短母指伸筋腱(EPB:Extensor Pollicis Brevis)
第2区画の腱
- 長橈側手根伸筋腱(ECRL:Extensor Carpi Radialis Longus)
- 短橈側手根伸筋腱(ECRB:Extensor Carpi Radialis Brevis)
これらの腱が交差する部分で摩擦が生じ、炎症が起こることで症状が現れます。

この部位の痛みが特徴
主な症状
痛みの特徴
- 手首の親指側(橈骨遠位部)の痛み
- 手首を動かすときの痛み
- 握る動作での痛み増強
その他の症状
- 腫脹(腫れ)
- 熱感
- 手首を動かすときの「キュッ」という音(捻髪音)
- 朝のこわばり感
症状の現れ方
症状は徐々に現れることが多く、初期は軽い違和感程度ですが、放置すると日常生活に支障をきたすレベルまで悪化することがあります。
原因と発症要因
主な原因
オーバーユース(使いすぎ)
- 反復的な手首の動作
- 長時間の手作業
- スポーツでの反復動作
具体的な発症要因
職業的要因
- パソコン作業(長時間のタイピング、マウス操作)
- 美容師(ハサミの使用、ドライヤーの操作)
- 大工・職人(工具の反復使用)
- 楽器演奏者(ピアノ、ギターなど)
スポーツ要因
- テニス(特にバックハンド)
- ゴルフ
- ボート競技(漕ぐ動作)
- 重量挙げ
日常生活要因
- 育児(抱っこ、おむつ替え)
- 家事(掃除、洗濯物干し)
- 園芸作業
診断方法
理学検査
Finkelstein Test(フィンケルシュタインテスト) 親指を握りこんで手首を小指側に曲げる検査。陽性の場合、手首の親指側に強い痛みが生じます。
触診
- 交差部位の圧痛
- 腫脹の確認
- 捻髪音の確認
画像診断
超音波検査
- 腱鞘の肥厚
- 滑液の貯留
- 腱の動きの評価
MRI検査
- より詳細な軟部組織の評価
- 他の疾患との鑑別
類似疾患との鑑別
ドケルバン病との違い
項目 | インターセクションシンドローム | ドケルバン病 |
---|---|---|
部位 | 橈骨遠位部(手首より上) | 橈骨茎状突起部(手首) |
腱鞘 | 第2区画と第1区画の交差部 | 第1区画(APL、EPB) |
音 | 捻髪音あり | 捻髪音なし |
Finkelstein Test | 陽性(痛み強度は軽度) | 陽性(痛み強度は強い) |
その他の鑑別疾患
- 橈骨神経浅枝の絞扼性神経障害
- 手根管症候群
- 関節リウマチ
- 腱鞘巨細胞腫
治療方法
保存療法(第一選択)
安静・活動制限
- 痛みを誘発する動作の回避
- 適切な休息の確保
物理療法
- アイシング(急性期)
- 温熱療法(慢性期)
- 超音波療法
- 電気刺激療法
装具療法
- 手首サポーター
- 親指スプリント
- テーピング
薬物療法
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 外用薬(湿布、軟膏)
注射療法
ステロイド注射
- 腱鞘内注射
- 炎症の抑制
- 症状の迅速な改善
手術療法
保存療法で改善しない場合に検討:
- 腱鞘切開術
- 癒着剥離術
- 滑膜切除術
セルフケアと予防方法
急性期のセルフケア
急激に発生した強い痛みがある場合は以下の処置を行いましょう。
また、使い過ぎた時なども同様です。
RICE処置
- Rest(安静): 痛みを誘発する動作を避ける
- Ice(冷却): 15-20分間のアイシングを1日数回
- Compression(圧迫): 適度な圧迫包帯
- Elevation(挙上): 心臓より高い位置に保持
ストレッチング
痛みが落ち着いているタイミングでは積極的にストレッチを行いましょう。
手首伸筋のストレッチ
- 腕を前に伸ばし、手のひらを下向きにする
- もう一方の手で指先を下向きに軽く押す
- 15-30秒保持、3セット
手首屈筋のストレッチ
- 腕を前に伸ばし、手のひらを上向きにする
- もう一方の手で指先を下向きに軽く押す
- 15-30秒保持、3セット
予防策
作業環境の改善
- デスクの高さ調整
- キーボードとマウスの位置
- 適切な椅子の選択
作業方法の工夫
- 定期的な休憩(30分ごとに5分)
- 作業姿勢の変更
- 両手の使い分け
筋力強化
- 握力強化
- 前腕筋群の筋力トレーニング
- 体幹安定性の向上
日常生活での注意点
職場での対策
パソコン作業
- エルゴノミクスキーボードの使用
- マウスパッドの活用
- 定期的な手首の運動

エルゴノミクスキーボード
重労働
- 適切な工具の選択
- 作業手順の見直し
- 保護具の着用
家庭での対策
育児
- 抱っこの姿勢を変える
- 授乳クッションの活用
- パートナーとの分担
家事
- 軽量な掃除用具の使用
- 作業の分散
- 適切な休憩
回復期間と予後
一般的な回復期間
軽症例: 2-4週間 中等症例: 1-3ヶ月 重症例: 3-6ヶ月以上
予後に影響する因子
良好な予後につながる因子
- 早期診断・治療開始
- 適切な安静の確保
- 原因となる活動の制限
予後不良につながる因子
- 診断の遅れ
- 継続的な負荷
- 不適切な治療
本沢整骨院での対応
館林市の本沢整骨院では、インターセクションシンドロームが疑われる方へ、状態を見極め以下のような対応を行っています。
状態の判断
ドケルバン病など似た疾患もあります。
まずは、あなたの痛みがインターセクション症候群であるのかを見極めます。
消炎鎮痛処置
炎症を抑え、痛みを軽減するためには物理療法が有効です。
当院では、以下のような物理療法機器を状態を判断したうえで提供しています。
- マイクロカレント:刺激のない電気で炎症を抑え組織修復を促す。
- ハイボルト:高電圧の刺激で優れた除痛効果が期待できる。
- 超音波:温熱効果で組織の滑走性改善が期待できる。
また、包帯や装具、サポーターなど生活に合わせた固定を提案し患部の安静を保つことで痛みの軽減をサポートしています。
手技・リハビリ
マッサージやストレッチなどの手技、徒手抵抗下でのリハビリ体操などを通して、筋肉の柔軟性改善や筋力強化を行っていきます。
まとめ
インターセクションシンドロームは適切な知識と対処法により改善可能な疾患です。重要なポイントは以下の通りです:
早期対応が重要 症状を感じたら早めの対処を心がけましょう。
原因の除去 根本的な原因となる動作や環境の改善が不可欠です。
継続的なケア 一度改善しても、予防策を継続することで再発を防げます。
専門医との連携 症状が続く場合は、整形外科や手外科専門医への相談をお勧めします。
手首の痛みは「よくあること」として軽視されがちですが、適切な対処により快適な日常生活を取り戻すことができます。症状でお悩みの方は、ぜひ専門家にご相談ください。
この記事は医学的情報を提供するものですが、個別の診断や治療については必ず専門家にご相談ください。
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